経営者が知っておくべき消費税の節税策

経営者にとって、消費税は負担が重い税金と言えます。

消費税は法人税等とは異なり、利益に対する課税ではないため、赤字であっても納付税額が発生する事が普通です。
毎年、消費税の納付時期が近付くと資金繰りに気を使う経営者の方もいらっしゃる事でしょう。

この記事では、消費税負担を少しでも軽くするために経営者が知っておくべき節税策をご紹介します。

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桐敷匠

桐敷匠

公認会計士試験に一発合格。企業の税務・会計全般だけでなく、スタートアップ支援、上場支援に至るまで、企業の財務に関するあらゆるノウハウに精通し、顧客からの信頼を集めている。前職はIT技術者であり、応用情報技術者資格も保有。その経験を活かし、端的に本質をつかんだ分かりやすい解説に定評がある。

はじめに

実は、他の税目と比べると、消費税の節税策は少ないです。
これは、建前上、消費税は事業者ではなく消費者が負担する制度設計になっているため、法人税や所得税等のような、特定の事業者を優遇する措置が取られにくいためです。

とは言っても、利用できる制度もいくつかあるため、事業の状況に応じて利用を検討すべき消費税の制度をまとめてご紹介します。

事業の状況 検討すべき事 効果
年度の売上が1,000万円前後に
なりそうな場合
課税売上高(消費税の掛かる売上)を1,000万円以下に抑える。 2年後の年度は消費税の納税義務が免除される。
ビジネスモデル上、費用に占める
給与の割合が大きい場合
簡易課税制度の適用を検討する。 簡易課税制度の適用により、本則課税(原則的な計算方法)と比べて納付税額が下がる可能性がある。
現時点で個人事業主であり、
かつ消費税課税事業者の場合
法人成りを検討する。 法人成り後、2年間は原則として消費税の納税義務が免除される。

下記では、上記の表について詳しく説明します。

1. 年度の売上が1,000万円前後になりそうな場合

年間の課税売上高が1,000万円以下の場合、2年後の年度は原則として消費税の納税義務が免除されます。
効果が出るのはかなり先になりますが、消費税の納付義務が無くなるのは経営上の大きなメリットですので、売上の年度着地が1,000万円ぎりぎりになりそうな場合は営業を多少調整するなどしてもよいかもしれません。

2. ビジネスモデル上、費用に占める給与の割合が大きい場合

一般に、費用に占める給与の割合が大きい事業では、通常の本則課税方式によって消費税額を計算すると税額が大きくなる傾向にあります。

このような場合、簡易課税制度の適用により消費税額が下がる可能性があります。
簡易課税制度を簡単にご説明すると、個別の事業者の細かい状況を考慮せず、売上と業種からざっくり消費税額を計算する制度です。
以下では、具体例を一つご紹介します。

2.1.具体例:税込売上高2,200万円、飲食業

簡易課税制度による消費税額は以下の通りです。

飲食業のみなし仕入率:60%
預り消費税額:2,200万円×10/110=200万円
みなし仕入額:2,200万円×60%=1,320万円
支払消費税額(簡易課税制度):1,320万円×10/110=120万円
消費税額=200万円-120万円=80万円

簡易課税制度においては、売上が同じで同業種であれば、実際の支出状況によらず、消費税額は一定になります。

一方、本則課税では消費税の計算上、各事業者の支出状況が考慮されます。
特に、給与の割合が大きい事業では、本則課税により計算した支払消費税額は小さくなりやすく、結果として消費税額は大きくなりやすいです。
上記の例で言えば、支払消費税額は120万円より小さくなり、本則課税による消費税額は80万円より大きくなりやすいです。

ただし、簡易課税制度の適用が認められるのは課税売上高5,000万円以下の事業者に限られますのでご注意下さい。

簡易課税制度による消費税額計算に使用する、みなし仕入れ率は業種によって異なります。
業種ごとの具体的なみなし仕入れ率は国税庁HPをご覧ください。

3. 現時点で個人事業主かつ消費税課税事業者の場合

個人事業主の方が法人設立をした場合(いわゆる法人成りをした場合)、法人設立後2年間は原則として消費税の納税義務が免除されるメリットがあります。(例外は国税庁HPをご覧ください)。

ただし、法人成りは消費税負担だけを考えた場合は有利であるものの、税負担全体で見ると有利かどうかは一概には言えません。
なぜなら、法人成り後に適用される税目が所得税から法人税等へと変わり、これらは税制度や税率等も異なっており、事業の状況等によって有利不利が変わるためです。

法人成りは税理士等の専門家とも相談の上、綿密にシミュレーションする事をお勧めします。
法人成り前後の税額の具体例を一つご紹介します。

3.1.具体例 売上2,200万円、利益800万円、所得控除最低額、飲食業

個人事業主 法人
所得税/法人税
住民税
事業税
合計 約200万円 合計 約200万円
消費税 約80万円 0円※3期目からは約80万円

上記のケースでは、所得税/法人税+住民税+事業税の金額がほぼ同じであるため、消費税が2期免除される分だけ、法人成りした場合の方が税額が低くなります。

4.まとめ

冒頭でもお伝えした通り、消費税の節税策は法人税、所得税等と比べると少ないです。
日ごろから節税を意識するというよりは、1.1.でお伝えした「事業の状況」に当てはまる状況になった時に各種制度の活用を検討するとよいでしょう。

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