中古車の減価償却で税金対策することの意味と注意点

税金対策として、中古自動車を購入すると良い、という話を聞いたことがあると思います。
しかし、そのしくみを分かっていないと、税金対策したつもりが、まったく効果がないどころか、むしろ損をしてしまうリスクがあります。
そこで今回は、中古自動車を購入することが税金対策になるしくみと、実際に行う場合の注意点についてお伝えします。

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桐敷匠

桐敷匠

公認会計士試験に一発合格。企業の税務・会計全般だけでなく、スタートアップ支援、上場支援に至るまで、企業の財務に関するあらゆるノウハウに精通し、顧客からの信頼を集めている。前職はIT技術者であり、応用情報技術者資格も保有。その経験を活かし、端的に本質をつかんだ分かりやすい解説に定評がある。

はじめに

まず、前提として、税金対策の効果が大きい中古車は「3年10か月落ち」以上のものです。
理屈を簡単にご説明すると、以下の通りです。

・固定資産を購入した場合、通常は購入した時点では全額費用にできず、数年に分けての費用計上となる。
・3年10か月落ち以上の中古車は1年で費用にできる。

すぐ費用にできると、その分だけ購入した年度の利益が減るため、直近の法人税額等を減らす事ができます。
この記事では、3年10か月落ちの中古車が税金対策になる理由について、具体例も交えて詳しく説明します。

1. 自動車は購入した時点では全額費用にできない

自動車の購入代金は、購入時点で全額を費用にできません。
その理由は、簡単に言うと自動車のような固定資産は長期間にわたって使用するからです。

これは一般の経費で考えると分かりやすいです。
例えば、清掃代をまとめて20年分払ったとして、ことし実際に清掃サービスを受けるのは1年分だけです。
それを、いくら20年分払ったからと言って、その全額を全て費用として認めるとおかしなことになります。

どういうことかというと、利益が出て法人税額が発生しそうになったら、色々な経費を前払いする事で利益や税額を減らすことが簡単にできてしまいます。
このようなことを防ぐために、実際の支払額に関係なく、清掃代で費用計上できるのは実際にサービスを受けた1年分が原則です。
残りの19年分は、19年にわたって、1年分ずつ費用計上していくのです。

固定資産もこれと同様で、例えば自動車であれば普通は6年程度使用できるので、購入した金額を6年に分けて費用計上しましょうというルールになっています。このように、固定資産の購入代金を複数年にわたって徐々に費用化していくことを減価償却と言います。

ちなみに、資産の種類によって費用計上する年数が決められており、これを耐用年数と言います。
自動車は6年です。

2. 「3年10か月落ち」以上の中古車は1年で費用にできる

ただし、3年10か月落ち以上の中古車は通常の6年ではなく、1年で費用にできます。
これはなぜかというと、中古の資産は新品と比べるとそれほど長く使用できないため、耐用年数の短縮が認められるからです。
古い資産ほど耐用年数を短縮できるようになっており、自動車の場合は3年10か月落ち以上で、最短である1年まで短縮できます。

3. 「3年10か月落ち」中古車を購入した場合の具体例

新車を購入した場合と、3年10か月落ちの中古車を購入した場合とを、具体例で比べてみましょう。
いずれも期首の月に270万円で購入したものとします。
また費用計上(減価償却)する金額の計算法は、早期に大きな額を費用計上できる「定率法」を採用します。

以下の表を見ると、6年間全体でみればどちらも270万円費用計上されるものの、初年度の費用計上額が180万円も変わる事が分かります。
法人税額は利益の約30%ですので、税額にして180万円×30%=54万円もの差が付くことになります。

新/古 費用計上額
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
新車 約90万円 約60万円 約40万円 約27万円 約27万円 約26万円 270万円
中古車 270万円 270万円

決算直前に購入する場合は要注意

3年10か月落ちの中古車は1年で費用計上できるものの、決算直前に購入する場合は要注意です。
「1年で費用計上」というのは、厳密には月単位で按分計算しますので、例えば決算月に購入したとしても、決算期に費用計上できるのは1か月分だけ、つまり購入金額の1/12ということになってしまいます。
残りの11/12は翌期に費用計上する事になります。

決算ぎりぎりに慌てて税金対策する場合、中古車の購入はあまり有効でない点を覚えておきましょう。

まとめ

この記事では、3年10か月落ちの中古車が税金対策になる理由を説明しました。
新車購入時と比較すると、自動車購入した年度の法人税額が大きく変わってきます。

税金対策を意識して自動車を購入するなら、「3年10か月落ち」を意識するようにしましょう。
ただし、決算直前に購入する場合、税金対策としての効果は薄いことも覚えておきましょう。利益の出そうな事が事前に分かっていれば、期首の月に購入する事が望ましいです。

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