事業再構築補助金とは?最大6000万円の支援を受けよう

コロナ禍にある中小企業等に向けて、「事業再構築補助金」の実施が決まりました。

家賃支援給付金等とは異なり、本制度は審査があるため、応募しても支援を受けられない可能性があります。
しかし、本制度の支援額はコロナ支援策の中でも飛び抜けて高額ですので、応募要件を満たす方は必ず応募を検討しましょう。

この記事では、事業再構築補助金の応募要件、支援額を解説するとともに、応募から補助金交付までの流れを解説します。

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桐敷匠

桐敷匠

公認会計士試験に一発合格。企業の税務・会計全般だけでなく、スタートアップ支援、上場支援に至るまで、企業の財務に関するあらゆるノウハウに精通し、顧客からの信頼を集めている。前職はIT技術者であり、応用情報技術者資格も保有。その経験を活かし、端的に本質をつかんだ分かりやすい解説に定評がある。

1. 事業再構築補助金とは

事業再構築補助金は、コロナの影響で厳しい状況にある中小企業や個人事業主等の思い切った事業再構築を支援するための補助金です。
申請者側で作成した事業計画を国が審査し、審査を通った事業に対して補助金が交付されます。
支援対象となる「事業再構築」の定義は広いです。(詳細は後述)
コロナに対応するための思い切った打ち手であれば、補助を受けられる可能性があります。

2. 応募要件

ここでは、応募要件を「どのような事業者が対象となるか」及び「どのような取り組みが対象となるか」に分けて説明します。

2.1. どのような事業者が対象となるか

以下の条件をいずれも満たす事業者が対象です。

(1)売上高が一定以上減少していること
正確には、「申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」

(2)中小企業、又は中堅企業であること
中小企業とは、以下の条件を満たす企業です。なお、個人事業主も中小企業に含まれますので条件を満たします。

業種 条件
下記以外 従業員数300人以下又は資本金3億円以下
卸売業 従業員数100人以下又は資本金1億円以下
サービス業 従業員数100人以下又は資本金5,000万円以下
小売業 従業員数100人以下又は資本金5,000万円以下

中堅企業とは、ざっくり言うと中小企業より少し大きい企業ですが、実は現時点では正確に決まっていません。決まり次第更新いたします。(資本金10億円未満で調整中とされています。)
世の中の企業の大半は資本金10億円未満ですので、ほぼ条件を満たすと考えて差し支えないでしょう。

2.2. どのような取り組みが対象となるか

対象となるのは「事業再構築への取り組み」であり、「3~5年で一定の成長が見込める」事業です。

(1)事業再構築への取り組み
今後公表される、事業再構築指針に沿ったものであれば、広く対象になります。
既存事業の見直しも対象ですし、別業種への参入も対象です。
具体的には例えば以下の取り組みが挙げられます。

既存事業の見直し 別業種への参入
・喫茶店の飲食スペースを縮小し、新たにテイクアウト販売を実施
・衣料品の店舗販売からネット販売への切り替え
など
・ガソリンスタンドのフィットネスジム運営開始
・和菓子製造会社の化粧品製造販売開始
など

(2) 3~5年で一定の成長が見込める
3~5年で「付加価値額の年率平均3%以上増加」又は「一人当たり付加価値額の年率平均3%以上増加」を満たす取り組みである必要があります。
※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

事業者が作成する事業計画は、この数値が達成できると審査員に思ってもらえるような、合理的な根拠に基づく説得力のある内容にする必要があります。

3. 支援額

応募企業の規模や取り組み内容によって支援額は異なります。
ただし、ほとんどの企業は「中小企業の通常枠」又は「緊急事態宣言特別枠」で応募する事になりますので、これらを詳しく説明します。

3.1. 中小企業の通常枠

■支援額の概要
補助率は補助対象経費の2/3、補助額は100万円~6,000万円です。

■留意点
基本的には設備投資が補助対象となります。
設備費のほか、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム購入費等が対象です。
パソコン、スマートフォン等の汎用品、従業員の人件費は対象外ですのでご注意下さい。

3.2. 緊急事態宣言特別枠

■支援額の概要
補助率は補助対象経費の3/4(中堅企業は2/3)です。
補助額は会社の規模(従業員数)によって異なりますが、100万円~1,500万円です。

■留意点
緊急事態宣言特別枠に応募するためには、以下の特別な条件を満たす必要があります。

(1)売上高が一定以上減少していること
緊急事態宣言の影響により、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少していること
※売上高の条件さえ満たしていればよく、地域や業種は不問

一方、緊急事態宣言特別枠で応募すると、以下の2つのメリットがあります。
・補助率が引き上げられる
・緊急事態宣言特別枠で審査に落ちても一般枠で再審査してもらえる。なおかつ一般枠の審査時に加点がもらえる。

このため、売上の条件を満たしている方は一般枠ではなく、緊急事態宣言特別枠で応募すると良いでしょう。

3.3. その他の応募枠と支援額

「中小企業の通常枠」又は「緊急事態宣言特別枠」以外で応募するケースは稀と思われるため、ここでは単にご紹介します。

支援枠 補助率 補助額 応募条件
中小企業 通常枠 2/3 100万円~6,000万円 ・売上が10%減少している事
・(一人当たり)付加価値額を年率3%増価させる事
中小企業 卒業枠 2/3 6,000万円~1億円 ・売上が10%減少している事
・(一人当たり)付加価値額を年率3%増価させる事
・「組織再編」「新規設備投資」「グローバル展開」に取り組む事
・資本金又は従業員数を増やし、中堅企業へ成長する事
中堅企業 通常枠 1/2~1/3 100万円~8,000万円 ・売上が10%減少している事
・(一人当たり)付加価値額を年率3%増価させる事
中堅企業
グローバルV字回復枠
1/2 8,000万円~1億円 ・売上が15%以上減少している事
・(一人当たり)付加価値額を年率5%増価させる事
・グローバル展開を果たす事
緊急事態宣言特別枠 2/3~3/4 100万円~1,500万円 ・売上が30%以上減少している事
・(一人当たり)付加価値額を年率3%増価させる事

4. 応募から補助金交付までの流れ

応募から補助金交付までの流れを大まかにお伝えすると、以下の通りです。
(1)事業計画の立案・応募
(2)審査
(3)事業の実施・実績報告
(4)実績の検査・補助金支払

それぞれのタスクを簡単に解説します。

(1)事業計画の立案・応募
本制度には審査がありますので、事業計画の立案は最重要タスクです。
事業計画は「認定経営革新等支援機関」と共に作成する事が必須です。
税理士も「認定経営革新等支援機関」の認定を受けている事がありますので、まずは顧問税理士に相談してみると良いでしょう。

(2)審査
審査は公募要領に掲載される、具体的な審査項目に沿って行われます。
具体的な審査項目は経済産業省が取りまとめ中であり、以下が候補とされています。
・事業化に向けた計画の妥当性
・再構築の必要性
・地域社会への貢献
・イノベーションの促進

事業計画を作成する際は、審査項目を意識する事が非常に重要です。
特に、「事業化に向けた計画の妥当性」では、(一人当たり)付加価値額の年率3%増加をどのように達成するのか、審査されることになるでしょう。

(3)事業の実施・実績報告
審査が無事通った後、事業者は実際に設備購入・事業の運営等を行い、国に実績報告します。
実績報告は1年ごとに行います。

(4)実績の検査・補助金支払
実績報告を元に検査が行われます。
また初年度に関しては検査終了後に補助金の支払いが行われます。

4.1. 補助金着金タイミングに関する留意点

上記の流れでお分かりの方もいらっしゃると思いますが、設備代金の支払いから補助金が入金されるまでに1年以上の時間差があります。
このため、事業計画策定時に、つなぎ資金の手当ても考慮しておきましょう。
補助金を担保にした融資制度が利用できる可能性もありますので、検討しておきましょう。

まとめ

コロナ対応のため、事業の見直しを迫られている事業者にとって、事業再構築補助金は大きな味方になる制度です。応募要件を確認の上、応募できる場合は必ず応募を検討しましょう。

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