増資時に意識すべき税金と資本金の関係、及び増資時に取るべき対策

増資による資金調達をする際、調達額をいくらにすべきか悩むことは無いでしょうか。
調達額については前回記事でお伝えした通り、会社の支配権をどうするか、という資本政策的な観点での検討が必要です。

それに加えて、実は税負担の観点からも検討を加える必要があります。
増資の額によっては税金が増える可能性があるためです。
そこで今回は、増資を検討するときに知っておくべき税負担の問題と、その対処法についてお伝えします。

また、中小企業向けの公的な補助金や助成金に関しても、資本金要件が含まれるケースがあるため、合わせてご紹介します。

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桐敷匠

桐敷匠

公認会計士試験に一発合格。企業の税務・会計全般だけでなく、スタートアップ支援、上場支援に至るまで、企業の財務に関するあらゆるノウハウに精通し、顧客からの信頼を集めている。前職はIT技術者であり、応用情報技術者資格も保有。その経験を活かし、端的に本質をつかんだ分かりやすい解説に定評がある。

1.資本金が大きいと税負担も重くなる

増資により資金調達する場合、会社の資本金が増加する事となります。
この結果、税負担が重くなるデメリットがあります。

これは、日本では中小企業に対して税制上の優遇措置を取っており、優遇措置の適用可否は資本金で決まる事が多いためです。
よって、増資による資金調達を検討する際は、増資後も税制優遇措置を使えるかどうかについて意識すべきです。

ただし、資本金は会社の信用力の指標として広く使われており、資本金が増加した場合は信用力が強化されるというメリットもあります。
また、業種によっては、一定以上の資本金が行政の許認可や入札への参加要件になっているケースがありますし、許認可等を必要としない業種であっても、金融機関からの借入や大手企業との取引をしやすくなるケースがあります。

そこで、増資のメリットを受けつつ、税制優遇も受けられるぎりぎりのラインを知っておく必要があります。

2.税制優遇措置と資本金要件

中小企業への主要な税制優遇措置と資本金要件を要約すると、以下の表の通りです。

税目 資本金要件 優遇措置
消費税 1000万円未満 ・会社設立後2年間は消費税の納税義務が免除される。
法人税 1億円以下 ・法人税の軽減税率が適用される。
・赤字(繰越欠損金)が出た場合、赤字の全額を翌期以降の黒字と相殺する事ができる。
・交際費を年間800万円まで経費にできる。
・単価30万円未満の資産は全額即時に経費にできる。
事業税 1億円以下 ・外形標準課税の対象とならない。
税目 資本金要件 優遇措置
消費税 1000万円未満 ・会社設立後2年間は消費税の納税義務が免除される。
法人税 1億円以下 ・法人税の軽減税率が適用される。
・赤字(繰越欠損金)が出た場合、赤字全額を翌期以降の黒字と相殺する事ができる。
・交際費を年間800万円まで経費にできる。
・単価30万円未満の資産は全額即時に経費にできる。
事業税 1億円以下 ・外形標準課税の対象とならない。

以下では、各税目の優遇措置の詳細を解説します。

2.1.消費税

資本金が1000万円未満の企業であれば、原則として、会社設立後2年間は消費税の納税義務が免除されます。(例外は国税庁HPをご覧ください)

ここで、資本金1000万円未満かどうかは各会計年度の期首時点で判定されます。
つまり、2期目が始まった後で資本金1000万円以上になる場合には問題なく優遇措置を受けることができます。

消費税は赤字であっても税金が発生する税目であり、業種によっては税額が売上の数%程度にも上ることから、負担が重い税金と言えます。
会社設立1期目に増資をする場合には資本金1000万円のラインを意識しましょう。

2.2.法人税

原則として資本金が1億円以下の企業であれば、法人税上の様々な優遇措置を受ける事ができます。
なお、例外もあります。詳しくは国税庁HPをご覧ください。

2.2.1.軽減税率の適用

黒字企業では特に、軽減税率の適用が大きいです。
下記の通り、資本金1億円以下の企業では税率が低く設定されています。

資本金要件 法人税率
1億円以下 23.2% ※年間800万円の所得までは15%
1億円超 23.2%
資本金要件 法人税率
1億円以下 23.2% ※年間800万円の所得までは15%
1億円超 23.2%

2.2.2.赤字を翌期以降に繰り越せる

赤字企業では赤字(繰越欠損金)の全額繰越の規定が大きいです。

例えば当期に1000万円の赤字が出て、翌期に1000万円の黒字が出た場合、当期の赤字1000万円と相殺する事で翌期の法人税上の所得は0円となり、法人税も0円となります。

一方、資本金1億円超の企業では赤字の半分しか繰越が認められていないため、上記のケースでは500万円分しか相殺ができず、残った黒字500万円に対して法人税が発生します。

2.2.3.その他

その他にも、交際費を年間800万円まで経費にできる、少額の資産は年間300万円まで(1個あたり30万円が上限)を一括して減価償却できる、などの特典があります。

2.3.事業税

資本金が1億円以下の企業であれば、外形標準課税の適用がないため、事業税は利益にのみ課税されます。特に赤字企業では税額が0円となります。
一方、資本金1億円超の企業では仮に利益が出ていなかったとしても、会社の規模に応じた税額(資本割・付加価値割)が発生します。

資本割は所在地や資本金、年度にもよりますが、東京都内の資本金約1億円の企業の場合、税額が年間50万円強発生します。
付加価値割は計算式が複雑なため例を示すのが難しいですが、ざっくり言うと「当期損益+人件費+支払利子+支払家賃」の1%余りが課税されます。

3.公的補助金や助成金の申請に係る資本金要件

補助金・助成金の資本金要件はまちまちですが、中小企業対象のものは中小企業基本法上の「中小企業者」とされるケースが多いです。

中小企業庁ウェブサイトに中小企業者の定義が記載されているため、以下に引用します。

業種 資本金要件 従業員数要件
①製造業、建設業、運輸業その他の業種(②~④を除く) 3億円以下 300人以下
②卸売業 1億円以下 100人以下
③サービス業 5000万円以下 100人以下
④小売業 5000万円以下 50人以下
業種 資本金要件 従業員数要件
①製造業、建設業、運輸業その他の業種(②~④を除く) 3億円以下 300人以下
②卸売業 1億円以下 100人以下
③サービス業 5000万円以下 100人以下
④小売業 5000万円以下 50人以下

引用元:中小企業庁FAQ

上記の表を見ると分かる通り、業種によって要件は異なっています。
なお、資本金要件を満たさなくても、従業員数が一定以下であれば「中小企業者」に該当する事となります。

増資を検討しており、なおかつ中小企業向けの補助金・助成金の活用を検討している場合には上記の資本金要件も意識しましょう。

4.増資時にできる税金対策

このように、増資した場合、資本金の額によっては、税制面で不利益を受けることになります。
ただし、増資の目的を実現しつつ、資本金の増額による税制面での不利益を避ける方法があります。

実は、増資をした場合は、増資額全てを資本金に組み入れる必要はなく、半額までは資本準備金に組み入れることができます。

本記事に記載した優遇措置の資本金要件については、資本準備金は無関係ですので、税金対策の観点では半額を資本準備金に組み入れる事をお勧めします。
(もちろん、信用力などの観点を重視して全額資本金とする判断もあり得ます。)

5.まとめ

この記事では、税制優遇措置と資本金要件の関係をご紹介しました。

資金調達時に税制優遇措置の適用可否だけを見て調達額を決めるのは本末転倒と言えます。
しかし、資本金が優遇措置を受けられるかどうかの微妙な水準にある時は調達額を微調整してもよいかもしれません。

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