住宅ローン控除の具体的な節税効果と適用条件

持ち家を買うと「住宅ローン控除」により所得税が下がるという事は皆さんもよくご存知と思います。
住宅ローン控除は、数ある所得税の控除制度の中でも節税効果の非常に大きな制度です。

しかし、住宅ローン控除の具体的な内容までは不動産会社等から説明されないことも多いと思います。
例えば、住宅ローン控除によってどの程度税額が下がるのか、「住宅ローン控除」を受けるにはどのような要件を満たせばよいのか、等です。
この記事では、具体例を挙げながら、住宅ローン控除による節税額や、適用要件をご説明します。

また、この記事の冒頭で住宅ローン控除を「節税効果の非常に大きい」とご紹介したものの、実は住宅ローン控除は2022年にも制度が改正される見込みで、節税額は小さくなりそうです。
今後、改正されたらどうなるのかについても、ご説明します。

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桐敷匠

桐敷匠

公認会計士試験に一発合格。企業の税務・会計全般だけでなく、スタートアップ支援、上場支援に至るまで、企業の財務に関するあらゆるノウハウに精通し、顧客からの信頼を集めている。前職はIT技術者であり、応用情報技術者資格も保有。その経験を活かし、端的に本質をつかんだ分かりやすい解説に定評がある。

1. 住宅ローン控除とは

住宅ローンを組んでマイホームを取得すると、借入金残高の年末残高の1%が所得税・住民税から減額される制度です。

現在、住宅ローンの借入利率は0.5%程度であるため、借入利息よりも住宅ローン控除による減税の方が大きいという逆ザヤの状態になっています。
つまり、本来は借入で利息を支払う必要があるところ、実質的には利息負担がないどころか、借入額の0.4%程度得をすることになります。

2. 住宅ローン控除による節税額

住宅ローン控除によってどこまでの節税効果があるのか、具体例を紹介します。

その前に、「住まい給付金」というものについて説明しておかなければなりません。

実は、住宅ローン控除は高額所得者ほど節税額が大きくなりやすい構造になっています。
これは、住宅ローン控除の控除額は借入金残高に応じて決まる事から、高額な借入をするほど(≒高額所得者であるほど)節税額が大きくなるためです。
このような状況に配慮して、借入金残高がそこまで大きくない方(高額所得者でない方)も十分に支援が受けられるように、「住まい給付金」という制度が設けられています。

2.1. 住まい給付金とは

住まい給付金は、給付金と名の付く通り、住宅取得者のうち高額所得者でない方に対して給付金を支給する制度です。
受けられる給付額は主に本人の所得によって決まります。所得が少ないほど給付金は高額になります。

また、すまい給付金は住宅ローンを組まない方でも給付を受けられることになっています。
(一方、住宅ローン控除はその名の通り、住宅ローンが必須です。)
以下の表で、具体的に受けられる給付額の目安を記載します。

(1)住宅ローンを組んだ場合の給付額

年収 給付額
~450万円 50万円
450万円~525万円 40万円
525万円~600万円 30万円
600万円~675万円 20万円
675万円~775万円 10万円

(2)ローンを組まない場合の給付額

年収 給付額
~450万円 50万円
450万円~525万円 40万円
525万円~600万円 30万円
600万円~650万円 20万円

※国土交通省 すまい給付金ポータルサイトより引用
※会社員・専業主婦・中学生以下の子供二人を想定
※本人が住宅持分の100%保有しているケースを想定

上記を前提として、住まい給付金の給付を受けられないケース、及び給付を受けられるケースそれぞれ、いくらの節税効果があるのか、具体例をご覧ください。
具体例1と2を比較すると、住宅ローン控除による節税効果は高額所得者である具体例1の方が大きいものの、具体例2ではすまい給付金を受けられるため、総額でみると同等の支援が受けられている事が分かります。

・具体例1(住まい給付金の給付を受けられないケース)
収入:給与(額面年収900万円)のみ
家族構成:専業主婦、扶養親族二人
住宅ローン借入額:4,000万円(期末残高)
住宅ローン控除ありの所得税額:約254,000円
住宅ローン控除なしの所得税額:約662,000円
節税効果:408,000円

・具体例2(住まい給付金の給付を受けられるケース)
収入:給与(額面年収700万円)のみ
家族構成:専業主婦、扶養親族二人
住宅ローン借入額:2,000万円(期末残高)
住宅ローン控除ありの所得税額:約90,000円
住宅ローン控除なしの所得税額:約295,000円
節税効果:約205,000円
住まい給付金給付額:200,000円

3. 住宅ローンの適用要件

住宅ローンを組めば、誰でも住宅ローン控除を受けられるわけではなく、「取得した住宅の広さ」「住宅ローンの年数」「住宅を取得した方の所得額」等に一定の制限が設けられています。
これらの条件は頻繁に変更されますので、住宅ローン控除を検討する際は、必ず最新の情報に当たるようにしましょう。
2021度税制改正でも、住宅の広さの要件が変更(緩和)されています。

要件 要件の概要
取得した住宅の広さ 40㎡以上、かつ半分以上が居住用
住宅ローンの年数 10年以上
住宅を取得した方の所得金額 合計所得金額3,000万円以下

4.「2022年税制改正」後の節税効果

前の節で、条件は頻繁に変更されるとお伝えしたものの、「借入金残高の年末残高の1%が所得税・住民税から減額される」点は変わらずに来ていました。
しかし、この点も手が入る可能性が出てきました。

前述の「逆ザヤ」状態を解消するために、借入利息が1%以下の時は残債の1%ではなく、利息分までとする話が出ています。利率1%以上で借入をされている方はほぼいらっしゃらないので、この点が改正されると、ほとんどの方で節税効果が小さくなることになります。

実は2021年税制改正でも手が入る話が出ていたものの、いったん見送りになりました。
2022年では改正される可能性があります。

ご参考として、先ほどの具体例のケースでの節税額を記載します。

・具体例1(住まい給付金の給付を受けられないケース)
収入:給与(額面年収900万円)のみ
家族構成:専業主婦、扶養親族二人
住宅ローン借入額:4,000万円(期末残高)、金利0.5%
住宅ローン控除ありの所得税額:約458,000円
住宅ローン控除なしの所得税額:約662,000円
節税効果:約204,000円

・具体例2(住まい給付金の給付を受けられるケース)
収入:給与(額面年収700万円)のみ
家族構成:専業主婦、扶養親族二人
住宅ローン借入額:2,000万円(期末残高)、金利0.5%
住宅ローン控除ありの所得税額:約193,000円
住宅ローン控除なしの所得税額:約295,000円
節税効果:約102,000円
住まい給付金給付額:200,000円

まとめ

この記事では、具体例を挙げながら、住宅ローン控除による節税額や、適用要件をご説明しました。
住宅ローン控除は節税効果の非常に大きい制度ですので、住宅取得を検討する際は適用要件を満たせるか、必ず確認しましょう。

なお、2022年の税制改正によっては、節税額が大きく下がる可能性がありますので、今後の改正の動向も確認しておく事をお勧めします。

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