前払費用を即時に経費にできる条件をご紹介します

大きな利益が出ており、多額の法人税が発生する見込みの会社では、期末に駆け込みで経費を立てて、法人税額を減らそうとする事がよくあります。
典型的には、家賃等をまとめて前払いする(前払費用といいます)ケースです。

しかし、実際には、前払費用を支払ったタイミングで全額経費とするには一定の要件を満たす必要があります。
仮に要件を満たさない場合には、前払いによるキャッシュ・アウトが先に来るだけで、法人税額は減らない事となり、前払いする意味はない(むしろ逆効果)と言えます。

この記事では、前払い費用とは何か、どういったものがこれにあたるのか説明した上で、前払費用を全額経費計上できるかどうかの条件をご紹介します。

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桐敷匠

桐敷匠

公認会計士試験に一発合格。企業の税務・会計全般だけでなく、スタートアップ支援、上場支援に至るまで、企業の財務に関するあらゆるノウハウに精通し、顧客からの信頼を集めている。前職はIT技術者であり、応用情報技術者資格も保有。その経験を活かし、端的に本質をつかんだ分かりやすい解説に定評がある。

1. 前払費用とは

前払費用とは、継続してサービス提供を受ける場合における、サービス提供前に支払われた対価のことです。

本来、法人税上の考え方では、サービス提供を受けたタイミングで経費計上するため、前払費用については、支払ったタイミングでは全額経費にすることはできません。

ただし、一定の条件を満たす前払費用は例外的に支払タイミングでの全額経費計上が認められています。
これはなぜかというと、短期間かつ等質・等量のサービスに関しては、ごまかしようがない事や出費が明白かつ確実である事から、事務負担を考慮して特別に容認するという趣旨です。

前払費用のうち、支払タイミングでの経費計上が認められるものは、例えば家賃や保険料等です。
逆に認められないものは税理士顧問料等です。
税務顧問は等質・等量のサービスとは言えないためです。

以下では、家賃や保険料等の前払費用を全額経費計上するための条件を説明します。

2. 前払費用を全額経費計上するための条件

前払費用を全額経費計上するには、以下の4つの条件を全て満たす必要があります。
(1)決算月に支払ったものであること
(2)次期以降も継続適用すること
(3)前払いの期間が1年以内であること
(4)収益との直接的な対応関係がないこと

以下、各条件の詳細及び注意点を説明します。

(1)決算月に支払ったものであること
支払日は決算月である必要があります。
翌月支払いは当然NGとして、決算月の前月に支払った場合もNGです。

(2)次期以降も継続適用すること
例えば、当期は家賃1年分を前払いして経費計上したけど、次期は業績が芳しくないから前払いをやめる、と言ったことはできません。特に金額が大きい場合は資金繰りに悪影響が出ますので、今後も前払いを続けていけるのか慎重に判断する必要があります。

(3)前払いの期間が1年以内であること
1年を超える前払費用は出費が確実とは言えない(途中解約による返金等が有り得る)ため、支払タイミングで全額経費計上する事はできません。

(4)収益との直接的な対応関係がないこと
例えば、借入を原資に金融資産などで資産運用している場合、借入金利子は運用収益と直接的な対応関係があるとみなされるため、たとえ利子を前払いしたとしても支払タイミングでの経費計上はできません。
ただし、家賃、保険金等の一般的な前払費用に関しては、収益との直接的な対応関係が無い事が通常ですので、この条件が問題になることはありません。

まとめ

本記事では前払費用をすぐに経費計上できる条件についてご説明しました。

条件を満たさない場合はせっかく前払いをしたとしても税金対策にはなりません。
実際に前払いをする前に、顧問税理士とよく相談をするようにしましょう。

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