貸倒損失とは?回収できない債権を費用化できる条件

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桐敷匠

桐敷匠

公認会計士試験に一発合格。企業の税務・会計全般だけでなく、スタートアップ支援、上場支援に至るまで、企業の財務に関するあらゆるノウハウに精通し、顧客からの信頼を集めている。前職はIT技術者であり、応用情報技術者資格も保有。その経験を活かし、端的に本質をつかんだ分かりやすい解説に定評がある。

貸倒損失とは、売掛金が回収できなかった時に、費用として処理する方法です。
得意先から売掛金が入金されない事態となった時、まずは回収する努力が必要です。
それでもどうしても売掛金の回収ができない場合、売掛金の貸倒損失を損金算入できないかを検討しましょう。
貸倒損失の損金算入(貸倒処理)により、税金を減らすことができるからです。

ただし実際には貸倒処理は経営者の独断で行う事は出来ず、税法で定められた要件を満たす必要があります。

この記事では、貸倒処理により税金を減らすことができる理由をご説明します。
また合わせて、貸倒処理が認められるために、どのようにすればよいのかについて説明します。

1. はじめに|貸倒損失とは

貸倒損失とは、回収見込みのない売掛金の回収をあきらめ、売掛金を費用として処理する事です。

2. 貸倒処理により税金を減らすことができる理由

貸倒処理により、法人税(個人事業主の方は所得税)、消費税の両方を減らすことができます。
その理由をそれぞれに分けてご説明します。

2.1. 法人税(所得税)

貸倒損失を計上すると、その分費用が発生し、費用の分だけその年の所得が減少する事となります。法人税や所得税は所得の大きさによって税額が決まりますので、所得が減少すれば税額も減少する事になります。

2.2. 消費税

貸倒処理を行うと、消費税が戻ってくる効果もあります。
あまりご存じでない方もいらっしゃいますが、実は、法人税(所得税)と同じくらいかそれ以上のインパクトがあります。
売上計上時点で実は一度消費税を納めており、貸倒損失を計上すると、売掛金に含まれていた消費税が戻ってきます。

2.3. 貸倒損失よりも早く損金算入できる場合がある(貸倒引当金)

なお、法人税(所得税)については、貸倒損失ではなく、貸倒引当金の計上により、売掛金の一部分をより早いタイミングで損金算入することができます。
貸倒引当金については別途ご説明します。
※消費税については貸倒引当金の考え方はありません。

3. 貸倒処理するための要件

冒頭でも記載した通り、貸倒処理するためには、税法上、厳しい要件が課されています。
これはなぜかというと、経営者の判断に任せた場合、実際にはまだ回収見込みがある債権を貸倒処理する事で、恣意的に税額を下げることができてしまうためです。

要件は「法律要件」「事実要件」「形式要件」3種類あり、いずれかを満たせば貸倒処理することができます。
なるべく早いタイミングで貸倒処理したい場合、多くは「形式要件」を活用する事となりますので、「形式要件」を中心にご説明します。

3.1. 貸倒処理のための形式要件とは

「形式要件」とは、簡単に言うと、一定期間取引が無い、等、実質的な判断を含まない外形的・形式的な要件です。売掛債権についてだけ使える判断方法です。
細かくは何種類かあるものの、よく利用されるのは、「最後の取引(後払いの場合は最後の支払予定日)から1年以上経過した」という要件です。

時間の経過という外形的・形式的な事実があれば貸倒処理できるため、他の2つの要件より明確であり、かつ、早期に貸倒処理できる可能性が最も高い基準と言えます。

形式要件により貸倒処理するための注意点は3つあります。
これらを守らないと、税務署から貸倒処理が否認される事がありますので、必ず確認するようにしましょう。

(1)形式要件による判断が認められるのは売掛金などの売上債権に限られます。貸付金等には、形式要件は使えません。
(2)備忘価額と言って、売掛金を貸倒処理する際、売掛金を帳簿上1円残す必要があります。
(3)定期的に督促するなど、回収しようとした証跡が必要です。

3.2. その他の要件

他の2つの要件を大まかにご説明すると、
「法律要件」は法律上、債権の消滅が確定した、という要件です。
例えば、会社の破産であれば、破産手続きを開始しただけではだめで、債権者集会等、必要な手続きを経て、破産手続きが終結する事が必要となります。

「事実要件」は事実上、全額債権の回収見込みがないことが明らかになった、という要件です。あいまいな要件に感じられますが、実際は「回収見込みがないことが明らか」というのは、かなり厳格な明らかさが求められます。
一例として、取引先の債務超過が何年も続いていて、かつ、返済資金の調達の見通しが全くない状態は一般的には「回収見込みがないことが明らか」と見られますが、例えば、債務超過が何年も続いていたとしても、親会社の経営基盤が強固で救済してもらえる可能性があるならば、「回収見込みがないことが明らか」とは認められない可能性もあります。

まとめ

売掛金が回収できない時は、まずは少しでも回収できるように努力をしましょう。
その上で、回収が難しい時は貸倒損失の形式要件を利用して、税金を減らす事をお勧めします。
形式要件を利用する場合には、必ず帳簿に売掛金を1円は残しておく事、取引先に督促する事を忘れないようにしましょう。

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