役員報酬の決め方は?税負担を減らすための目安を伝えます
- 2020年6月28日公開

経営者は自分の給料(役員報酬)の金額を自由に決めることができます。
しかし自由と言っても、役員報酬を出しすぎると税負担で損するのではないか等、漠然とした不安をお持ちなのではないでしょうか。
そこで、この記事では、役員報酬を決める際に考慮すべきポイントを2つお伝えします。
また、役員報酬を決める際には手続き上の注意点があり、規定を守らないと損金にならないリスクがあります。
この記事では、それらの注意点も併せてご説明します。

桐敷匠

最新記事 by 桐敷匠 (全て見る)
- 中古車の減価償却で税金対策することの意味と注意点 - 2021年1月9日
- 貸倒引当金とは?回収不能になりそうな債権を費用化する条件 - 2021年1月9日
- 貸倒損失とは?回収できない債権を費用化できる条件 - 2020年11月18日
1.役員報酬を決める際に考慮すべきポイント
役員報酬を決める際に考慮すべきポイントは以下の2つです。
・税負担額のシミュレーションをする
・会社の資金繰りに支障をきたさないようにする
以下ではそれぞれについて詳しく解説していきます。
1.1. 税負担額のシミュレーションをする
役員報酬を決める際は、税負担額のシミュレーションする事をお勧めします。
これは、役員報酬の金額によって、会社・個人合わせた全体の税負担額が変わるためです。
役員報酬を決める際は、全体の税額が低くなる水準に設定する事がお勧めです。
一般的に、会社の利益が低いうちは利益を会社に残さず、役員報酬として支給した方が節税になります。
逆に、大きな利益が上がるようになった場合は役員報酬を抑えて、残りは会社に残す方が節税になります。
これはなぜかというと、会社の支払う法人税は税率がほぼ一定であるのに対して、個人の支払う所得税は累進課税と言って、所得の大きくなるほど高税率になるためです。
1.1.1. 具体例 年間利益5,000万円、社長個人の所得控除額200万円のケース
このケースでは役員報酬は1300万円以下とするのがお勧めです。
なぜなら、このケースにおいてはおよそ1300万円までは法人税率と所得税率がほぼ一緒ですが、1300万円を超えると、所得税率が跳ね上がるからです。
役員報酬 /法人所得 |
1,000万円 /4,000万円 |
1,300万円 /3,700万円 |
1,800万円 /3,200万円 |
個人の税金 (所得税+住民税) |
178万円 | 275万円 | 490万円 |
会社の税金 (法人税等) |
1,000万円 | 925万円 | 800万円 |
合計税額 | 1,178万円 | 1,200万円 | 1,290万円 |
1.2. 資金繰りに支障をきたさないようにする
役員報酬は会社にとってはキャッシュ・アウトですので、あまりに高額に設定すると、会社の資金繰りに悪影響の及ぶ恐れがあります。
特に固定費の大きい業種や、入金よりも買掛金の支払いの方がかなり早く来る業種等では手許資金の枯渇することのないように、役員報酬は余裕をもった水準としましょう。
2.役員報酬を決める際の手続き上の注意点
役員報酬を変更する場合、変更タイミングに規制があり、原則として期首から3か月以内の変更のみ認められます。
これは、役員報酬の恣意的な変更による、過度な節税を防止するための規定です。
別のタイミングで変更した場合、役員報酬が損金不算入となり、法人税の負担が重くなります。
なお、業績悪化した場合にやむを得ず減額する場合には損金不算入にはなりませんので、この点は心配する必要はありません。
まとめ
この記事では役員報酬の金額の決め方をご説明しました。
記事で記載した具体例はあくまで一例であり、利益水準、今後の事業見通し、経営者個人の家族構成等により税負担額や、適正な役員報酬の水準は変わってきます。
一度、税理士にシミュレーションを依頼することをお勧めします。
関連記事
-
貸倒引当金とは、売掛金の回収できない金額を事前に見込んでおいて、費用処理することです。 売掛金の回収が既にできなくなっている場合は貸倒損失を計上することにより、税金を減らすことができます(詳しくは「貸倒損失とは?回収できない債権を費用化できる条件」を
-
黒字企業の経営者にとって、法人税等の税額は常に興味のある話題なのではないでしょうか。利益が想定外に大きい場合、何か経費を立てられないか慌てて検討される方もよくいらっしゃいます。 このような方には、企業版ふるさと納税がお勧めです。 企業版ふるさと納税
-
貸倒損失とは、売掛金が回収できなかった時に、費用として処理する方法です。 得意先から売掛金が入金されない事態となった時、まずは回収する努力が必要です。 それでもどうしても売掛金の回収ができない場合、売掛金の貸倒損失を損金算入できないかを検討しましょう。
-
大きな利益が出ており、多額の法人税が発生する見込みの会社では、期末に駆け込みで経費を立てて、法人税額を減らそうとする事がよくあります。 典型的には、家賃等をまとめて前払いする(前払費用といいます)ケースです。 しかし、実際には、前払費用を支払ったタ
-
税金対策として、中古自動車を購入すると良い、という話を聞いたことがあると思います。 しかし、そのしくみを分かっていないと、税金対策したつもりが、まったく効果がないどころか、むしろ損をしてしまうリスクがあります。 そこで今回は、中古自動車を購入することが
-
会社から役員に対する報酬は、毎月の定額報酬ではなく役員賞与として受け取った方がお得という話を聞いたことは無いでしょうか。 この話は、場合によっては事実と言えます。 支給額の水準によっては、社会保険料が抑えられ、その分だけお得になるケースがあるからで
-
定番として取り上げられる節税策の中に、倒産防止共済が挙げられます。 (経営セーフティ共済とも呼ばれます) 倒産防止共済は中小企業の連鎖倒産防止を趣旨とする共済ですが、実務においては節税策として使われることもよくあります。 しかし実は、倒産防止
-
多くの経営者の方も漠然とご存知と思いますが、パソコン等の備品は、金額によって、すぐに経費計上できるものとできないもの(資産計上の上、数年にわたって「減価償却費」として経費にしていくもの)があります。 備品購入時に、すぐに全額を経費計上できるかどうかの
-
小規模企業共済は絶対入るべき!3つのメリットと知っておくべき注意点
小規模企業共済は、中小企業の役員や個人事業主の方で、所得税・住民税を節税したい、老後の資金の効率的な準備をしたい、と悩んでいる方におすすめしたい制度です。 手元に残るお金は、年収が800万円の場合、例えば毎月7万円の掛金を20年かけると、共済をやった
-
コロナウイルスにより打撃を受けた事業者への支援策として、持続化給付金、雇用調整給付金に続き、家賃支援給付金の申請が始まろうとしています。(2020年7月以降) ただし、この家賃支援給付金は家賃を支払っている事業者を対象としているため、事業者自身で事務