法人成りとは?法人化を検討すべき3つのタイミング
- 2020年6月15日公開

法人成りとは、個人事業主として事業を行っていた方が株式会社などの法人を設立し、法人としての事業に移行する事です。
個人事業主の抱える悩みとして、そもそも法人成りをするべきなのか、また法人成りするとしてもタイミングをどう考えたらよいのか分からない、といったものが挙げられるでしょう。
この記事では、法人成りを検討すべきタイミングについて考え方をご紹介します。

桐敷匠

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はじめに
結論からお伝えすると、法人成りを検討すべきタイミングは以下の3つのいずれかに当てはまる時です。1つでも該当したら検討をして下さい。
- 年間利益が500万円程度の時
- 年間売上が1,000万円程度の時
- 経営上、信用力が必要になった時
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以下ではそれぞれについて詳しく解説していきます。
1.年間利益が500万円程度の時
まず、年間利益が500万円程度に達した時です。
なぜなら、個人より法人の方が、税負担が軽くなる可能性が高いからです。
どういうことかというと、一般に、個人事業主は利益が大きいほど税負担が重くなりますが、法人の場合は個人に比べると税負担はそこまで大きく変わりません。
これはなぜかというと、個人事業主に課される所得税が累進課税制度を採用しているからです。
法人にも累進課税制度はありますが、個人に比べると緩やかです。
利益が小さいうちは個人事業主の方が税負担は軽いですが、累進課税制度により利益が増えると税負担が逆転するタイミングがあります。
このタイミングの一つの目安が500万円程度と言われています。
ただ、実際には個々の事業の状況や業種等にもよるため、利益がある程度上がるようになった時点で、専門家を交えてシミュレーションをすることがお勧めです。
2.年間売上が1,000万円程度の時
次に、年間売上が1,000万円程度に達しそうな時です。
なぜなら、そこで法人成りをすると、消費税の節税になる可能性が高いからです。
課税売上高(消費税の掛かる売上)が1,000万円を超えた場合、超えた年の翌々年から消費税の納税義務が発生します。
消費税は利益が無くても発生するため、負担の重い税金です。
このような場合、法人成りによって消費税の納税義務を最大2年間先延ばしする事ができます。
ただし、法人成りによって消費税免税のメリットを得られるとしても、上記でも述べた通り、特に利益が小さい場合は法人税等の負担が増える可能性があります。
このケースでも、専門家を交えてシミュレーションをすることがお勧めです。
3.経営上、信用力が必要になった時
最後に、経営上で信用力が必要になった時です。
なぜなら、一般に、個人事業主と法人とでは法人の方が信用力は大きくなるからです。
これはなぜかというと、法人設立には登記が必要である等、法人の方がしっかりした組織が作られ、しっかりした運営がされるものと想像されるためです。
この結果、例えば以下のような場面で法人の方が有利になります。
- 銀行からの融資を受けたいとき
- 大手企業と取引したいとき
特に大きいのは2つ目です。
個人事業主というだけで融資審査が通らない事は少ないですが、個人事業主相手には取引をしない方針の会社は少なからず存在します。
事業が軌道に乗り、業績を拡大したい場面で法人化を検討するのはよくあるケースです。
まとめ
この記事では、法人成りを検討するべきタイミングについてご紹介しました。
- 年間利益が500万円になった時(所得にかかる税金の節税)
- 年間売上が1,000万円になった時(消費税の節税)
- 経営上、信用力が必要になった時(ビジネスチャンスの拡大)
このいずれかのタイミングになったら、法人化を検討してみることをおすすめします。
将来的に法人成りを検討する場合、本文でも何回かお伝えした通り、一般論としての目安の金額等はあるものの、実際には各個人の状況によりますので、早めにご相談をする事をお勧めします。
そもそもですが、経営上、法人成りは必ずしも必須ではありません。
法人設立自体にも費用がかかりますし、小規模なBtoCビジネス等では法人成りのメリットも薄いため、当面は個人事業主のまま進める事も選択肢の一つです。
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